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塗り床工法DB読み物防滑の塗床、入れた後に何が起きるか

想定読者:工場・厨房の管理者で、床を防滑(すべり止め)仕様にするか迷っている方

防滑の塗床、入れた後に何が起きるか

「滑って転ぶ前に、床を防滑にしたい」——ここまでは多くの現場が同じ結論にたどり着く。問題はその先で、実際に骨材(砂状の粒)を撒いた床を何年か使った現場から、汚れ・清掃・摩耗をめぐる声が上がっている。防滑にすること自体を否定する声ではないが、「入れたら終わり」ではないことを、契約前に知っておいたほうがいい。この記事は、施工業者やメーカーが自社サイトで公開している記述の引用と、工法データベースの実数だけで、その中身を整理する。引用元の性質(相談の要約か、業者自身の解説か)は、それぞれの箇所に書いた。

結論

防滑用の骨材が作る凹凸は、滑りにくさと引き換えに、汚れが入り込む隙間にもなる。使ううちに清掃の手間が増え、粒の粗さの選び方や下地処理の丁寧さで結果が変わり、摩耗で防滑効果自体が年単位で落ちていく例もある。発注前に決めるべきは、価格や見た目より先に「粒の粗さ」と「清掃体制が対応できるか」の2点になる。

実在の声

引用の出どころには偏りがある。今回集めた16件のうち7件は同一社(赤田善株式会社)のQ&A事例、4件は同一ページ(株式会社AIMのコラム)からの引用で、施工業者2社の発信に集中している。赤田善のQ&Aは、寄せられた相談を会社側がまとめ直して掲載したものであり、相談者本人が書いた文章そのものとは限らない。

防滑仕様を導入した後に「掃除が大変になった」と後悔する工場は少なくありません。滑り止め効果を追求するあまり珪砂の粒を大きくしすぎると、深い凹凸の間に食品のカスや油汚れが入り込んでしまいます。

— 株式会社AIM「【徹底解説】工場の転倒事故を防ぐ!塗床工事における珪砂(防滑)の役割と選び方」https://www.aim-inc.biz/blog/column/209186

こうなると、通常のブラシでは汚れを掻き出すことができず、蓄積した汚れがバクテリアやカビの温床になってしまいます。

— 株式会社AIM(同上)https://www.aim-inc.biz/blog/column/209186

滑りにくさと掃除のしやすさは反比例するため、現場で履かれている靴の種類や、日々の清掃方法に合わせて珪砂の粗さをミリ単位で調整することが成功の鍵です。

— 株式会社AIM(同上)https://www.aim-inc.biz/blog/column/209186

その結果、台車の車輪が異常な早さで削れてしまったり、逆に床の防滑の凹凸自体が削り取られて、結局滑りやすくなってしまったりするリスクがあります。

— 株式会社AIM(同上)https://www.aim-inc.biz/blog/column/209186

この作業、実は均一に撒くのが難しいんですよ。
経験のない方が撒くと大失敗するも恐れも‥。

— 光コーティング「塗床の上塗り塗装と防滑骨材の散布|埼玉県東松山市の化粧品会社工場にて塗床工事「4日目」」https://www.nuriyuka.jp/5184/

現状、コンクリートの上に塗床材を施工している床がツルツルになっているので滑りやすい。その為、従業員が転倒し怪我をしないか不安である。また、長年の使用により床が割れてきており、その場所に水が溜まってしまうので衛生的良くない。

— 赤田善株式会社「工場内の床を防滑にし補修も行いたい」おしえて!アカタゼン! https://www.akatazen.co.jp/qa/detail.php?ID=248&lv1=2&lv2=9&lv3=248

施工前に油や古いワックスを取り切れていないと、そこから塗膜が浮き始め、局所的に水や油が回り込みます。一見きれいでも、踏むと「ヌルッ」と滑るエリアが点在します。

— 株式会社竹山美装「工場で床が滑る対策が気になるあなたへ|原因解明からDIYや工事で安心を手に入れる転倒事故防止の実践ガイド」https://takebi.net/column/uncategorized/factory-slip-prevention-guide/

凸凹が汚れを噛みやすく、清掃性や美観の維持が難しい

— 株式会社スリーエスコーポレーション「滑りにくい床に「汚れにくさ」をプラス!“防滑タイプ”の無溶剤UVコーティング」https://fact.3s-corp.co.jp/blog/non-slip/

DBの実数

工法マスター(565工法・4メーカー収録)のうち、防滑の記載がある工法は170件(うち「軽防滑」14件)。メーカー別では日本特殊塗料92件・水谷ペイント47件・アイカ工業31件、樹脂別ではウレタン66件・エポキシ46件・水性26件・MMA18件・その他5件・シリコン1件・要取得8件となっている。

価格面では、防滑170件の㎡単価は1,500円〜37,450円(円/㎡表記の169件、中央値9,850円)。全565件の中央値8,800円と比べると、防滑仕様は中央値でやや高い水準にある。骨材の粒度が価格表に印字されている工法は18件で、セラサンドA-1・A・Bがそれぞれ6件ずつを占める。防滑仕上げを別料金で足せる工法は2件で、いずれもアイカ工業ASL(コーティング仕上げ+500円/㎡・税込525円/㎡、流しのべ仕上げ+800円/㎡・税込840円/㎡)だった。

用途を「厨房」に分類できた工法は1件(日本特殊塗料のユータックオリゴマー、厨房専用防滑工法)のみ。ただし想定用途が「要取得」の行が510件/565件を占めており、これはメーカーの価格表自体に用途欄が無いために起きている。厨房用の選択肢が少ないというより、メーカーが用途ではなく機能(防滑・耐薬品性など)で製品名を付けているために、用途で検索すると見つかりにくいという「探し方」の問題に近い。防滑の工法だけをまとめて見るなら、防滑(すべり止め)の塗床工法一覧で170件を確認できる。

なお、防滑170件のうち最低施工面積が300㎡以上とされる工法が92件、80㎡以上が4件、条件なし(表記なし)が74件ある。小規模な厨房・作業場では、この最低面積の条件が先に効いてくる場合がある。

起きること(時間軸)

入れた直後 骨材を均一に撒く作業自体が難しく、経験の少ない施工者だと撒きムラが起きる恐れがあると、施工業者自身が現場ブログで書いている。

使ううちに 珪砂の粒を大きくしすぎると、深い凹凸に食品のカスや油汚れが入り込み、通常のブラシでは掻き出せずに汚れが蓄積していく。凸凹が汚れを噛みやすいこと自体は、防滑仕上げを扱う別の施工会社も同様に指摘している。台車やフォークリフトの通行が多い床では、車輪側が異常に早く削れる、あるいは逆に防滑の凹凸自体が削り取られていくことも報告されている。

年単位 摩耗によって防滑の凹凸がすり減ると、防滑仕様で施工したはずの床が結局また滑りやすくなる。既存の塗床がツルツルになって滑りやすくなり、従業員の転倒を心配する相談も実際に寄せられている。防滑は「入れて終わり」ではなく、経年で効果が落ちていく前提で見ておいたほうがいい。

打ち手

現場の声から裏が取れている範囲では、次のようなことが実際に行われている。

【1】滑りにくさと掃除のしやすさは反比例するため、靴の種類や日々の清掃方法に合わせて、骨材の粗さをミリ単位で調整する。

【2】骨材の散布は均一に撒くのが難しい作業のため、経験のある施工者に任せる(経験不足による撒きムラの失敗が実例として語られている)。

【3】施工前に油や古いワックスを取り切る下地処理を徹底する。これが不十分だと、見た目はきれいでも踏むと滑るエリアが局所的に残ることがある。

【4】散布後の余分な骨材の掃き取りを丁寧に行う。この点については、次のような解説サイトの記述もある(運営者の明記がない紹介型サイトの情報のため、断定の根拠にはしていない)。

掃き取りが不十分のままだと骨材ムラができ、均一な防滑の床にならない可能性があるため、しっかりと掃き取りましょう。

— あんしん塗床ガイドin大阪「防滑工法による塗床改修とは?大阪で施工を依頼する前に知っておきたい基礎知識」https://www.coatedfloor-work.net/repair/antislip.html

確認できなかったこと

調べた範囲で、次の論点は実在を確認できなかった、または材料が無いため書いていない。

【1】「凹凸が起点になって床が割れる・欠ける」という因果関係は、実在を確認できていない。関連する引用の中身は「床が割れて、その割れ目に凹凸ができて水が溜まる」という順序であり、凹凸が先に割れの原因になったという声ではなかった。この記事では、この因果関係を書かなかった。

【2】防滑仕様にしたことで転倒事故がどれだけ減った・増えたかという発生件数や労災の統計は、今回の材料に無く、書いていない。

【3】防滑仕上げにしたことで清掃コストや清掃時間が何%増えるといった具体的な数値も、材料に無く書いていない。

【4】用途別(厨房以外の食品工場・倉庫・冷凍庫など)の防滑工法の件数比較は、工法マスターの想定用途欄の大半(510件/565件)が「要取得」であるため、この記事では出していない。